週刊!Tomorrow's Way
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テーマはその日の出来事、ニュースから。あと50年経てば、いまの時代、どう語られているのだろうか。
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メッセージ
「吾、汝の言に反対す。されど吾、汝の、その言を言うの権利、死に至るまで擁護せん」。学生時代に出会った言葉です。政治をめぐる意見に賛成、反対はつきもの。お互いを尊重しつつ、意見を述べ合いたいものです。 
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脱線、緊迫の瞬間――。運転士、車掌の心をよぎったのは何か?
(※長くなってしまったので、お急ぎの方は小見出しのみ、どうぞ。)

JR福知山線の脱線事故について、昨晩、NHKスペシャルを見た。
そして、記事もさまざま読んだ。
ありがちな表現だけれど、事故は起こるべくして起こった――と、
そう書くしかないのではないか。そんな気持ちになった。

●あがいても……、抗えない運命に吸い込まれるように。

しかし、その一方で、事故の瞬間に、
こんなことに巻き込まれまいとあがき、うめいた、
人間のドラマもあった――と、感じ始めている。

乗客にあったのはもちろんのことだが、
それは運転士、車掌、指令たちにもあった。

なのに……、人の力ではどうしようもない、抗えない運命が、
ぽっかりと口を開けて待ち構えていて、その中に飲み込まれてしまった。

                    ※※

●運転士。ブレーキレバーを握り締めたまま絶命……。

昨日、29日、事故車両を運転していた運転士、高見隆二郎さんの遺体が収容された。
高見運転士は、ブレーキレバーを握りしめたままの姿で、運転台と壁にはさまれ、
血だらけで息絶えていたのだという。

彼自身の運転の未熟さから、判断の誤りから、
事故の引き金が引かれた責任は否定できないと思われるけれど、
彼もまた、当然のことながら事故に遭いたいなどと考えて、
運転をしていたわけではない。

最後の瞬間、必死に抗ったのだろうが、
彼自身の力では、否、それが誰であろうと、
人の力では、もはやどうすることもできなかった。

                    ※※

●25日、午前9時過ぎ――。通勤・通学の車両。

事故の起きた25日の朝、ピークは過ぎたとはいえ、
その列車にはおよそ580名が乗車していた。
通勤、通学などの客で、かなり混みあった状態だった。

ダイヤも、依然として過密な時間帯で、
運転士、車掌は秒刻みで運行することを強いられていた。

運転士の高見さんは23歳。高校を卒業してJR西日本に入社、
車掌勤務を経て運転士の試験に合格。
運転士としての経験は、その日までで11ヶ月。

その日その日を送るだけで精いっぱいの彼にとって、
通勤時間帯の快速電車の運転は、ひどくプレッシャーのかかるものだった。

                    ※※

●「超マジメ」と、運転士の同級生。誇らしいはずの職場が……。

高校時代の友人の高見さん評は、一致して「超がつくほどマジメ」――。
バスケットボール部に所属し、彼を「ムードメーカーだった」と話す友人の声も聞いた。
また、JR西日本に入社が決まったときには「満足げだった」と話す友人も。
すこし、誇らしい気持ちだったのだと思う。

そんな青年が、プレッシャーに満ちた職場で、
理想と現実の落差に戸惑いながら、生きていくことになった。

                    ※※

●速度競争を組織に強いたJRの幹部たち……。

JR西日本は、民営化後、関西圏における私鉄路線との競合を強いられていた。
かつては親方日の丸で、車両がガラガラでも給料の心配もなければ、
失業の不安もなかった。

それが民営化後、一転して採算性を問われ続け、
スピードで勝ることによって、乗客の確保を考えるようになり、
車両の高速化、ダイヤの過密化に走った。――とは、
さまざまなニュースの報じるとおり。

こうした管理部門の効率性重視の姿勢は、その裏側で
現場に負担を強いることになり、しかもその繰り返しになっていた。

                    ※※

●そして謝罪し、賞与返上を発表したJRの幹部たち……。だが。

事故後、JRの幹部が記者会見や遺体安置所で
お詫びの言葉を述べていたが、そんなのは、笑止――。
また、役員賞与を、たしかこの先1年間、凍結するなどの
措置も発表されたと思うが、それまた笑止の上にも笑止。

彼らは会社のヒエラルキー(権力構造)の頂点に立ち、
貴族然とした身なりに身を包み、下層の社員、現場の社員を、
奴隷のようにこき使ってきただけの存在だったのだ。

                    ※※

●東京都内、踏切事故の会社に似る、JRの空気――。

先ごろ、東京都内で起きた私鉄踏切事故のときに、
その私鉄会社に感じた空気と同じ空気を、今回も、JR西日本に感じている。

                    ※※

●直後に、運転士の処分歴を発表したJR西日本……。

事故後、JR西日本は高見運転士の処分歴について、間に髪入れず発表した。
昨年6月には約100メートルのオーバーランを起こしていた。

また約2年前には、車掌として阪和線の車両に乗務中、
乗客から居眠りを指摘され、厳重処分を受けていた。

非常ベルの作動を怠り、訓戒処分を受けたこともあったという。
その事実は否定しようがないけれど、その背景は、JRから説明がなかった。

また、置き石の可能性についてもJRから発表があったが、その後の検証から、
これは保身の匂いが濃いものであったと、誰しもが感じているとおり。
ばかばかしくも感じられ、このエントリーでは割愛する。

                    ※※

●もうこれ以上、処分は受けられない――と、運転士。

高見運転士は、事故のその日までに、もうこれ以上、
処分を受けることができない心理状態に、追い詰められていた。

処分を受ける――とは、運転士に対する再教育を意味するとのこと。
その内容の苛烈さについても、数多くの報道がある。

この、再教育の苛烈さがもとで、ある運転士は自殺にまで追い込まれ、
遺族が裁判を起こし、判決で、自殺の原因として認定されたケースもあるくらいなのだという。

鉄道会社にあって、運転士は現場の職務担当として、花形なのかもしれない。
どの会社であっても、車掌などの通常勤務経験ののち、
試験を受けて運転士となっていく。
選ばれて、就くことのできる仕事なのだ。

ところが、プライドを持たされた人間が、再教育の名のもとに、
それを一時なりとも剥奪、蹂躙されるのは、逆に耐え難い苦痛――となるのだろう。

再教育は運転士にとって、「懲役刑」にも等しいものだった。

                    ※※

●「再教育」は懲役刑。運転士を運転ロボットに変える場――?

列車の運転からはずされ、罵声、罵倒、草むしり、トイレ掃除。
同僚の視線にさらされながら、1日に何度もの反省文書き……。
自分を貶めないことには、そこから逃れることができない。

しかも、その間、実質的には給料の一部になっているはずの乗車手当てが、
一切支給されず、経済的にも苦しめられる。
そして……、昇進、賞与、昇給にも響いてくる。
さらに再教育が重なっていけば、最終的に運転士資格の剥奪がある。

組織の側からすれば、再教育への恐怖心によって、
運転士を運転ロボットに変え、効率化、速度アップと
間違いのない運行を両立させようとしているのかもしれない。

                    ※※

●どうして、40メートルもの距離をオーバーランしてしまったのか。

効率化を追求する経営のなかで、運転士、車掌などの現場は、
ふだんから過酷な勤務を、「通常」の状態として強いられていた。
高見運転士も、事故を起こす1日前に宿直勤務があり、
その日はその日で、通常勤務になっていたらしい。

どうして、一つ前の駅で、40メートルもの距離を
オーバーランしてしまったのだろうか……。

解明されていない部分ではあるけれど、
彼の心身の状態は、すでに余裕をなくしていたのだろう。

                    ※※

●車掌室への、運転士からの電話……。「負けてほしい」と。

ホームの、定位置に列車を止めることができなかった。
それどころか、7両編成の前半分ほどの車両が、ホーム自体から外れてしまった。

頬を汗がつたう……。
車内電話で車掌に連絡する。
「(オーバーランが)なかったことにしてくれへんか」
「それはちょっと、無理や」
「そんなら、負けといてよ。お願いや」

車掌は高見運転士が車掌時代、同じ車掌区だったことがあり、
顔見知りだった。車掌はオーバーランが発生した場合、
指令に報告の義務があるが、これまでも過少報告をしたことは、たぶんあった。

高見運転士の人柄、もともとの真面目さも知っていた。
処分を幾度か受け、厳しい立場に立たされていることも知っていた。
温情が沸いた。

「8メートル、オーバーランしました」
彼が指令所に報告した距離だった。

                    ※※

●無謀な運転に追い込まれていく運転士……。

高見運転士は遅れを取り戻そうと、まなじりを決した。
通過駅の戸口を過ぎてからの、直線の4・3キロ。
ここで取り戻すしかない。

速度をめいっぱいに上げるしかない。
彼自身、いままで出したこともないスピード。
車体が風に揺れ、うなるのだが、それを恐怖に思う余裕すらなくしていた。

実はその区間は、運転士仲間では、遅れを取り戻せる唯一の場所として、
半ば「常識」にさえなっていた――。
カーブの手前まで速度超過のまま走り、ブレーキをかけ減速。
1度や2度、程度はともかく、どの運転士も経験していることだった。

                    ※※

●指令所からの、2度の電話に出なかったのはなぜか……?

通過駅を過ぎたところで、運転席に指令所から電話が入っていた。
2度、あった。指令所では車掌からのオーバーランの報告を受け、
列車の遅れ具合などを直接確かめようとしたらしい。

しかし、そのとき、彼はどうだったのか――。
すでに、電話に出るだけの余裕がなかったのかもしれない。
軋む車体に、ハンドルレバーを握り締め、格闘の最中だったのかもしれない。
ブレーキレバーを引き、必死だったのかもしれない。

列車は直線で最高速度の120キロを出していたし、
それをカーブの前に減速しなければならなかったのだ。

また、電話に出ようと思えば出られたのだけれど、
オーバーランについて、運転中にもかかわらず叱責を受けるのは耐え難く、
せめて時間を取り戻してから応答したいと考えたのかもしれない。

とにかく、指令所からの、2度の電話に、彼は出なかった――。

                    ※※

●オーバーランの対応に追われる車掌――。

後部車両にいた車掌は車掌で、
オーバーランのあと、対応に追われていた。
運転席、運転士との連絡、確認。バックの確認。車内放送。乗客の乗降……。
高見運転士からの、報告についての手加減の懇請。
指令所への連絡――。

乗客へのお詫びの車内放送。
そしてざわつく車内――。客からの文句が、車掌室のなかまで
響いてくるような気持ちになっていた。

「阪急より100円も余計払ってんのや。それで電車が遅れたらしょうもないやんか」
「いっそがしいのに、困るなぁ。サギや、こんなン。カネ、返せ」
「たるんどるんとちゃうか、JRは」――。

列車の遅れに、車掌や駅員が、
客からこんな罵声を浴びせられるのは、日常だった。

                    ※※

●事故現場、1キロ手前――。緊急連絡、事故。

列車の速度が上がるのは、オーバーランした場合、
多かれ少なかれ、いつものことだった。

しかし……、どうも、いやな揺れだ。
速すぎるのではないか。

運転席へ電話を入れる……。応答なし。

車掌も異常さに気付きつつあった……。
まずい、と思い始めていた。
不安がこみ上げてきた。

あっ……と、思った。
「カーブにさしかかるのに、こ、この速度では、無理だ……」

事故現場、1キロ手前に迫る中、無意識に電話機を取り上げた。指令所へ。
「こ、この電車、脱線するかもしれませんッ!」
「なにィッ、おいッ、どうしたんだッ!」
「…………あ、ああ、うわあッ」

軋み。揺れ。急ブレーキ。激しい振動。突然の大音響。衝撃――。
悲鳴、焦げる匂い……、サイレンの音。

                    ※※

●「俺の電車、脱線してしもうたんや……」と、車掌。

列車が止まって、車掌は呆然とした。
指令所に緊急連絡をしていた電話器を握り締めたままだった。
「脱線しました」。

少しして、言いようもないほど情けなくなり、悲しくなった。
早く前の車両に行って状況を確認しないと、と考えつつ、
意識してそうしたのか無意識だったのか……、
彼は自分の携帯電話を取り出し、自宅、自分の妻に電話した。

「俺の電車、脱線してもうたんや……」
「え、え、大丈夫なの? ケガは――?帰ってこれるのッ?」
「もう1本、電車に乗らなあかん。帰れんかもしれん……」
ちぐはぐなやりとりだった。

                    ※※

107人の死亡と450名を超える負傷者を出した今回の事故――。
多くの方々の命が、人生が、一瞬にして失われてしまった。

事故を取り巻く状況、背景、さまざなな問題を考えると、
事故は起こるべくして起こった。
でも、その気になって、防ごうと思えば防げた。

会社にも責任があるし、それが公共の輸送機関である限り、
国土交通省の管理にも問題がある。

当事者たちの責任は重いと思うが、私たちの社会、私たち自身にだって、
振り返らなければならないことがある。

きつい話だと思う。


※読売、朝日、毎日、サンケイ、日経、東京新聞、なにわWebの各サイト、
NHKスペシャル、河北新報等を参考に再構成し、筆者自身の推論を加えました。
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by yodaway2 | 2005-04-30 15:34 | 社会の問題、世相さまざま